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「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません」
昨年、JR渋谷駅街頭に張り出されたマナー向上を訴えるポスターとはまた打って変わった広告が話題となっている。
今年もまたハロウィーンの時期がやってきた。近年では、仮装した若者が渋谷を舞台にお祭り騒ぎに興じる姿が恒例になっている。昨年は10月29日に起こった韓国・梨泰院圧死150人事件を受け、渋谷区も街に来るのは控えるよう要請したが、多くの若者が街へ繰り出し物議を醸した。
今年はどのような様相を見せるのか。渋谷区は9月4日付けでハロウィーン期間の渋谷駅周辺地域の安全対策のために10月27日から10月31日の期間、18時から翌朝5時までの路上飲酒を禁止し、28日と31日の酒類の販売提供自粛を要請。さらに10月26日には渋谷駅のシンボルでもあるハチ公銅像に仮囲いを設置することを表明し、本気の対策を行うと宣言した。
「渋谷駅周辺に来ないで欲しい」「ハロウィーン目的で来街を予定している人がいるのであれば、考え直して欲しいということを伝えたい。ハロウィーン期間に渋谷駅周辺に来ないで欲しいという意味です」
9月12日の記者会見で渋谷区の長谷部健区長はかつてないほどに語気を強めてこのように語ったが、果たして。10月28日土曜日、記者は「厳戒態勢」の渋谷を取材した。
消えた仮装の若者?28日夕方、渋谷の街は人こそ多いものの、仮装姿で練り歩くひとはほとんど見当たらない。
「渋谷のハロウィーンはやっぱり楽しいですよ。でも今のところコスプレしている人はあまりいないですね。渋谷区が『来ないで』と言っていたの知っているので当日(31日)は避けました。今回は初めて渋谷に来たから、コスプレを楽しみたかったんですけどね。やっぱり他の人と写真を撮るのは楽しいし、可愛い子もいっぱいいる。当日は控えるから許してほしいです」(漫画『NARUTO』のキャラのコスプレをした男性)
毎年渋谷でのハロウィーンイベントを楽しみにしているという20代の会社員男性に話しかけるともの寂しい様子でこう語った。
「今年の渋谷はシブいですね。コスプレしている人を眺めるだけの傍観者みたいな人ばっかりで全然盛り上がってないし、冷めてます。もっと盛り上がってると思っていたけど、いつもの週末の渋谷とたいして変わらないです。渋谷区の呼び掛けは知っていたけど、ぶっちゃけ1年に1回だから許してよ、とも思います。女の子と写真撮って、仲良くなりたいなっていう感じです、頑張ります」
単行本が500万部を突破し、今年4月からはアニメ放送も配信され世界中で人気を博し、まさに今年のトレンドともいえる『推しの子』(週刊ヤングジャンプ)に登場するキャラクター「星野アイ」に扮する女性も今回のハロウィーンは例年とはまた違った印象を受けたという。
「今年は海外の観光客の人ががっつりコスプレをしていて、日本人はお面とか被り物とか控え目な仮装をしている傾向です。渋谷区が強くNGを出したのが影響しているのか、去年とは違ってみんな大人しい。
私はTikTokを撮りたくて来たんですが、警備員の指示に従って同じ場所に留まらないよう注意しています。もちろん路上で飲酒も喫煙もしないです。
せっかくハロウィーンの雰囲気を楽しみたい人が多くいるのに、区が禁止の方向にもっていこうとしているのは本当にもったいない。マナーの悪い人にだけとことん罰を与えればいいんじゃないんですかね。ハロウィーンイベント自体をやめさせる以外の選択肢も考えてほしいなと思います」
「酔っている人がいなくて楽しくない」今年、渋谷区がハロウィーン対策費に投じる予算は約4790万円。「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません」「ハロウィーンの渋谷は、ゴミ箱でも、ナンパ場でも、灰皿でもありません」などと、日本語と英語で注意喚起を促す広告を10月中旬から渋谷駅周辺に掲示している。
また昨年と同様、混雑が予想される10月28日と31日には駅周辺のコンビニなど35店舗に酒類販売の自粛を要請し、ハロウィーン期間内の5日間には例年問題となっている「路上飲み」も規制。
「渋谷だと酒が買えないみたいなんで、わざわざテキーラとワインを最寄りから買ってきました。でもやっぱり去年よりも酔っている人がいなくて楽しくないですね。立ち止まったり座り込んだりってだけで警察に注意されます。コスプレしてる人も少ないしもうこの後は六本木でも行こうかなと思います」(20代男性ラッパー)
さらに今年の渋谷は交通面でも規制が厳しい。待ち合わせの恒例スポットともなっているハチ公銅像の周辺を閉鎖するだけではなく、人の出入りが激しいJR渋谷駅のハチ公口までも使用禁止。宮益坂へと続くガード下までバリケードを張るなどした。
「友達と待ち合わせがあって急いでいたのに(国道)246号からスクランブル交差点に来るまでに渋滞が起こっていて本当に困りました。タクシーの運転手さんももう今日は渋谷に近寄りたくないって嫌そうな感じでしたね。帰りは山手線を使うんですが、今日は南口のほうしか使えないってSNSで見たので終電だけは逃さないようになるべく早めに帰ろうかと思ってます」(30代バー経営の男性)
センター街での路上立ち止まりや撮影なども例年以上に厳しく取り締まりが行われて、職務質問を受ける人の姿も見受けられた。
「一昨年も来たんですけど、撮影したいって人だかりができておまわりさんに補導されちゃって(笑)。露出が多いからかわからないんですけど、今日も駅のほうを歩いていただけで急に職質されて。これ実は仕事着なので自分では控えめなつもりなんですけど今年は特に厳しいですね」(SM嬢のゆかタマさん)
22時を過ぎても人は増えない渋谷区の”本気”が功を奏したのか、22時台を過ぎてもハロウィーン仮装に身を扮した日本人が増える様子はない。
「毎年来ていましたが今年は本当にコスプレをしている人が少ないですね。それでも僕は渋谷のハロウィンを愛してるので。1割のマナー悪い人のために下火になるってのは悔しいから今日も来ました。純粋にコスプレを楽しんでる人にとっては大切なイベントなんです。常識の範囲内で楽しめるように協力したいですし、周りにもそうしてほしい」(『鬼滅の刃』竈門炭治郎のコスプレをした男性)
「今年は本当にコスプレしている人が少ない。しっかりと決めてきたのが逆に浮いていて恥ずかしいです。池袋のイベントでもコスプレしているんですが、そちらは良くも悪くも本気の人たちしかいない場所。
渋谷は、コスプレにすごく興味ある人も、そうでない人もいるのが良いところで、色んな人に見てもらって、写真を撮ってもらうのが醍醐味なのにあまり盛り上がっていなくて残念です。1年に1回しかないのに、このまま渋谷でハロウィーン仮装をしない雰囲気になっていくのは寂しいですね」(『新世紀エヴァンゲリオン』綾波レイのコスプレをした20代中国人女性)
渋ハロはもう終わった?23時半、渋谷駅周辺の警備がやや緩和されるも。例年であれば終電を逃したハロウィーンイベントに興じる若者で賑わうダンスクラブも、仮装客の姿はあまり見られない。
「海外の方でコスプレされている人はちらほらいますが、人出はいつもの休日とあまり変わりませんね。去年はがっつりと仮装してる日本人で長蛇の列だったのですが……あれだけ規制がかかるとやはりお客さんも減りますね」(渋谷にあるクラブの店員)
午前3時をまわっても警備の数は減る様子はない。路上で騒ぐ若者は見受けられず、かつてないほど渋谷センター街は平和な雰囲気を保ったまま、夜が明けたのだった。
(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)
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