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 人生100年時代といわれる現代、「何歳からでも新しいステージに踏み出すのは遅くない」という考え方が広がっています。著名人も例外ではなく、ある分野で成功を収めた人が転機を経験し、別のフィールドで奮闘する姿は多くの人に勇気を与え、モチベーションやインスピレーションを与えています。

【画像】「仮面ライダー剣 20thAnniversary STAGE&TALK」

インタビュー連載 「私の人生が動いた瞬間」

 「仮面ライダー剣(ブレイド)」は、平成ライダーシリーズ第5作として2004年から2005年にかけて放送。当初はファン評価が高い作品ではなく、キャストの滑舌をやゆした“オンドゥル語”がネットミームとして有名に。同時期にスタートした「特捜戦隊デカレンジャー」が往年の刑事ドラマを思わすけれんみあふれるストーリーで評価の高い作品だったこともあり、不遇の存在と捉えるファンも少なくはありません。

 しかし物語が後半へ進むにつれ、作品はヒートアップ。当初は未熟さばかりが指摘されたキャストも練度を増し、今では再評価するファンも多く、2024年に20周年を迎えるにあたり東映公式YouTubeでは第1話からの配信が開始され、ひときわ注目度が高まっています。

 ねとらぼでは、トランプをモチーフにした4人のライダーのうち、クラブの仮面ライダーレンゲル/上城睦月役を演じた北条隆博さんにインタビュー。すでに俳優を引退した北条さんが役者復帰を果たす20周年イベントへかける思いに加え、人気が数字となって突きつけられる放送当時の苦しさや、3人のライダーたちとの絆、またオンドゥル語への正直な気持ちを聞きました。

●特撮出身俳優イベントを全国へ 元仮面ライダーの野望

―― 放送当時は初の現役高校生ライダーとして話題に。現在は俳優を引退し、大阪でカフェバーの店長をされています。具体的なお仕事内容を聞かせてください。

北条隆博(以下、北条) ちょうど2年前くらい、2021年10月から大阪の日本橋で「Cafe 2nd STAGE」というイベントができるカフェをやっています。東京でいえば秋葉原のような場所で、平日は日替わりランチやお茶を出す一般的なカフェ営業、土日には何かしらのイベントを運営しています。主な軸は、ライダーでも戦隊でもウルトラヒーローでも、日本の特撮作品に出演された俳優さんを招待してのトークショーです。

―― なぜ大阪だったのでしょうか? 俳優時代の活動拠点は東京で、北条さんは愛知県のご出身です。

北条 日本で2番目に大きい都市といっても、東京からしてみたら大阪も地方でしかありません。名古屋も含めて、日本の西側には特撮が好きな人たちが参加できるようなイベントが全然ないんです。ファンは地方からでも東京のイベントに参加するけど、交通費だけで数万円。夜行バスを使うにしてもしんどいじゃないですか。だったら西側の人たちが、すっと参加できるようなイベントがあればいいと考えました。

 もともと小さいころから飲食業をやるのが夢で、そこへ僕の好きな特撮と、イベントをやれるスペースを詰め込んだ場所が今の「Cafe 2nd STAGE」です。イベントの設営も自分でやりますし、平日は料理をしたりお客さまとお話ししたりという感じで過ごしています。

―― 他に同じことを考えた人がいたとしても、ご自分が看板になれる北条さんには強みはありそうですが?

北条 東映の方々とは今でも仲良くさせていただいていますし、最終的にはオフィシャルのイベントにしたいです。かつて携わった人間として全国、世界へ特撮の輪を広げる手助けができればうれしい。東映さんも巻き込んでもう一つ大きい段階へ、うまいことやれたらいいな、正直(笑)。戦隊では今、特別大使として松本寛也※くんがいて、ここ最近の戦隊イベントではだいたいMCとかやっているんです。でも仮面ライダーに大使は特にいないんですよね。

※松本寛也さん …… メインキャストとして「魔法戦隊マジレンジャー」(2005)「特命戦隊ゴーバスターズ」(2012)に出演した他、複数の作品にゲスト参加。2017年にスーパー戦隊親善大使に任命

●「“会いに来て”じゃなくて会いに行く」 20年分の感謝を込めて

 「仮面ライダー剣」は2024年に20周年を記念し、主人公の剣崎一真/仮面ライダーブレイドを演じた椿隆之さんをはじめ、森本亮治さん(相川始/仮面ライダーカリス役)、天野浩成さん(橘朔也/仮面ライダーギャレン役)、そして北条さんらメインキャスト4人が出演するヒーローショーの開催を決定。情報解禁前に行われたインタビューで、イベント開催を決めるまでのいきさつや、ファンへの思いを伝えてくれました。

―― 前作「仮面ライダー555(ファイズ)」は記念作品が決定済みです。「剣」の20周年にも期待していいのでしょうか?

北条 そもそも戦隊と違って「仮面ライダー」では20周年の前例がそんなにないんです。「555」で初めてやっと20周年の映画を作ることになりました。ファンの間では「正直、20周年イベントはいったん『剣』までしかできないんじゃないか」という話もあるんです。その後の作品を並べていったら、オリジナルキャストが全員そろって新しい映像を作れる可能性があるのは僕らまでかなって。「剣」の場合は、本当に完全な形で20周年にオリキャス全員そろった映像が見られるので、やっておきたいです。「実は決まっているけど言えない」ではなくて、今は本当に分からない状態(笑)。「555」の場合は話が決まってから撮影、発表までかなり短期間で進んだらしいし。

 「20周年でやらなきゃいけないことって何だろうね」と、椿さん、天野さん、森本さん、僕の4人でまず話をしました。もちろんゴールは映像作品であっても、われわれの気持ち的には「来てくださいじゃなくて、自分たちからファンの方々がいる場所へ行くスタンスが、20年分のありがとうの気持ちの伝え方なんじゃない」という結論に至ったんです。

―― それが「仮面ライダー剣 20thAnniversary STAGE&TALK」につながったと。イベントは2部構成で、ヒーローショーとトークショー、また4人との握手や撮影会も予定されています。

北条 それこそ「昔懐かしの『後楽園ホールで僕と握手!』を復活させようぜ」みたいな話までざっくばらんにしています。

 ずっと応援し続けてくださった方も、どこかのタイミングから新規でファンになってくださった方々もいっぱいいて、応援してくれる人たちがいたからこそ、今、感謝が伝えられる。当時と違い僕らは1年間の長期撮影をしているわけでもないですし、自分たちから日本全国をまわって地元の方々に“ありがとう行脚”をしていきます。

 九州、四国と西日本、真ん中ら辺の東海地方を攻めて、関東、東北、行ければ北海道まで、「剣チームが20周年の感謝の気持ちを伝えにやってまいりました!」「20年ありがとうございました!」というのが筋じゃないかな。少しずつ場所も決まってきて、まずは兵庫県尼崎市から。会場が決まり次第ポツンポツンと予定を増やしていく予定です。

―― 仮面ライダーシリーズは、だいたい放送終了後のタイミングで感謝イベントを打って、ショーやトークショーをやるのが恒例です。イメージとしてはこのイベントの20周年版でしょうか?

北条 ガワ(ライダースーツ姿)もあり、僕たちもそのままの姿で出てきて生のお芝居をする、いわば20周年版舞台みたいな完全オリジナルのショーです。

 ちゃんと集大成を見せないと。さらに10年後、30周年の時でも何かできるかもしれない。つまりまだまだ年を取ってはダメだって話になってしまいましたが。

―― 「剣」のメインキャストでは、北条さんが一番若いじゃないですか。

北条 それが「一番老けたな」といじられるのは僕なんですよ。17、18歳の時に出て、そこから20年のスパンって逆に一番老けて見えるんです……。10代から30代と、20代から40代ではだいぶ違うと思う。

●オンドゥル語にキャストが思うこと 「悪いことばかりではなかった」

 「仮面ライダー剣」を語る時に、引き合いに出されがちなのがオンドゥル語。初回に登場した主人公のせりふ「本当に裏切ったんですか」が「オンドゥルルラギッタンディスカ」と聞こえたという空耳に端を発するもので、作品の枠を超えて広くネットミームとして浸透する一方、よく思わない番組ファンも存在します。

―― あらためて20周年を迎えるにあたっての思いを聞かせてください。

北条 本当にうれしいことに、当時リアルタイムで見ていた子どもたちが全員20半ばになり「懐かしいな、昔そういえばめっちゃ好きだったな」と見返してくれて、「ブレイドめっちゃ面白いやん」って……再評価っていうんですかね。「ブレイド 再評価」で検索すると結構ヒットするので、再評価されやすい作品みたいです。ネットかいわいではネタとしてすごく有名になってしまったので。

―― いわゆるオンドゥル語でしょうか。

北条 そうですね。ネットミームとしてのオンドゥル語は知っているけど、作品は知らない人が「気になるから見てみたらめっちゃ面白かった」とはまるのが王道パターン。特に仮面ライダー、特撮すら見たことなかったのにオンドゥル語のおかげでたまたまたどり着いた方々がたくさんいらっしゃり、ミーム化も悪いことばかりではありませんでした。

 でもリアルに嫌な人は「本当に好きなので」と剣愛をたくさん語ってくれます。役者として僕らが嫌な気持ちになるんじゃと気にしちゃう方もいる。最近も天野さんが「オンドゥル語」と言ったら気にされている方がいました。

 いろいろなファンの方々を尊重したくて、ネタから入り「剣」を見たからこそ作品自体が好きになってくれた人たちもいるので、僕らがオンドゥル語を不快に思ってしまうとそのファンの人たちも含めて切り捨てることになってしまう。だから僕らから言うことで、少なくとも僕らは不快に思っているわけではないと分かってもらえたら。

―― 当時は今のようにSNSがありませんでしたが、反響はご存じでしたか?

北条 僕ら全員、撮影が終わって1年後くらいにオンドゥル語のことを知りました。今みたいにSNSがないからニコニコ動画とかに字幕を付けたものがアップされていて「何だその動画」とみんなで腹を抱えて笑いました。

 別に滑舌が悪いと言われようが当の本人たちは全く気にしていないんです。発端になった椿さんに関しても、ああして字幕を付けられて拡散されちゃったからそうとしか聞こえなくなっちゃっただけ。そう聞こえたらそう聞こえたで、感情が高ぶり言葉がバーッと出た時、気持ちが走ってしまい何を言っているか分からない人間をとてもリアルにやっただけだと自分たちでは全員一致して考えています。

 仮面ライダーはやっぱり新人の登竜門で、芝居なんてやったことない状態から始まり、そこから学んでいろいろと成長していく現場。だから正直、悪いこととは思っていませんし、僕らはこう考えていると伝わるといいのかもしれません。窮屈になっちゃうじゃないですか。

―― 天野さんも配信開始時、「オンドゥル講座」っておっしゃっていましたね。

北条 「オンドゥル講座はじまるよ」って(笑)。「いやいやいや」と思いましたけど、「仮面ライダー剣」だからね? でも「仮面ライダー剣」ってそういう人間たちの集まりというか、僕らの素顔が見えるようになったのもSNS時代さまさまですね。

●リアルな数字がチームの絆を強くした 「くそー! と思うことで本当に仲が良くなった」

―― オンドゥル語に関しても、1年半後に知ったとおっしゃっていましたけど、放送当時はどこまで放送時の反響とか自分のキャラへの感想を把握されていたのでしょうか?

北条 当時は……全員「ちょっとな」「申し訳ねえな」って気持ちがあったと思います。「仮面ライダー龍騎」「555」と右肩上がりだった視聴率が「剣」でガクッと減った。毎週、戦隊とライダーの視聴率がスタジオに貼り出されてリアルに聞かされるんですよ。

―― 前作の「555」は人気作で、同時期に放送されていたのは「デカレンジャー」でしたね。

北条 「555」は僕もめちゃくちゃ食い入るように見ていたほど。すごく面白かったし、「デカ」も人気だったんですよ。グサッとくるくらい面白かった。当時は放送開始も同時期だったじゃないですか。

―― 数週間ずれるだけでした。今は4カ月くらいずれてますね。

北条 そう。放送時間も今とは反対で、戦隊からのライダーの順番で続けて見られるようになっていたのに、ライダーで視聴率がちょっと下がっていると「あれ?」となるんです。反対なら皆さん途中で起きてきたのかなと想像できたのですが、見ていない人たちがいるとはっきり突きつけられるわけで。

 バンダイさんからも、おもちゃの売り上げの報告が現場へ入ってくるんです。そういう数字を撮影中にずっと聞かされるので「うわっ。やばいな、やばいな」と思いながらも、毎週渡される台本には決められた物語があり、僕らは新人の俳優でそれに沿ってやっていかなきゃいけない。

 そんな経験があったからなのか、よりチームとしての結束力が高まりました。本当は1人ずつ部屋があるんですけど毎日のように椿さんの楽屋に集まり、一緒に何をするわけでもなくおのおの好き勝手していました。みんな私物を置いていくからとんでもない部屋になってしまい、椿さんがいなくても誰かしらいる楽屋になっちゃっていましたね。

―― 劇中ギスギスする展開もありましたけど、裏では関係なく?

北条 関係なく、絶対一カ所にしか集まらないんです。「特撮チームでここまで全員が仲良いチームは見たことない」ってよく言われました。いまだに遊ぶし、電話もする関係です。数字が伸びないのは僕らからしても面白くはなかったので、「くそー!」と思うことで本当に仲が良くなった。「何で自分の代で落ちてしまったんだろう」と責任を感じていたというか、ちょっと罪悪感もありました。僕(レンゲル)のおもちゃに関しても、やっぱり4号ライダーですし後付けのライダーだから売り上げは……。そもそも数も作っていなかったし、めっちゃシビアでした。

―― 今はSNSもあり、お店もあり、直接ポジティブな意見を見聞きできる環境が増えましたが、どう感じていますか?

北条 励みにもなるし、周りの人たちがどう思っていて、どういうものに需要があるのか目に見えるので指標にしやすい。もともとすごく苦手だったんですよ。昔だとブログとか「なんか書こう」じゃなくて「やばい、書かないといけないわ」ばかりで、ただの自己満足でしかないのかなとしばらく使っていない時期があったんですけど、7、8年前くらいからぼちぼち投稿するようになりました。天野さんも最近X(Twitter)を始めて「俺の日常をこんなに喜んでくれる人たちがいるんだ」とびっくりしていました。

 今はもうSNSを見れば何が起きているのかすぐ分かるようになった。すごく便利なツールですよね。反応をすることでさらに盛り上がって、日本だけじゃなくて海外の人たちまで広がっていく。最終的には僕らの盛り上がりで、「日本の特撮やばい、めちゃくちゃ面白い」と海外の方へ気付かせられればいいですよね。

―― それは仮面ライダーOBとして思うことなのか、ファンとして思うことなのか、どちらの要素が強いと思いますか?

北条 ファンとして30%、OBとして70%くらい。半分趣味で、半分使命感。おもちゃが売れないと次の作品に影響を与えかねないんですよ。視聴率も、あの当時すごく気にしていました。

 根底にあるのは仮面ライダーをもっと世界に知らしめたい気持ち。日本の特撮には、日本の技術スタッフだからできるクオリティーがあると思うんです。小さい国からでっかい国へ。『ONE PIECE』がNetflixで実写化されたみたいに、もっと宣伝して、もっと興味を持ってもらい、海外でヒットすれば制作費も回収できてしっかりとした投資になる。海外から利益を得た上で、国内で制作できるようにしていったら、もっとやべえものを作れるんじゃないかなと思ってます。これはあくまで理想論であって「世界でヒットさせるには、物事はそんなに簡単ではない」という事は重々分かっています……。でも、世界中の人々にメイド・イン・ジャパンの特撮をもっと好きになってもらいたい。

―― 経営者の視点だ。YouTubeでの配信もスタートしたばかりですが、反響はありましたか? 睦月やレンゲルの出番はまだまだ先ですが。

北条 それこそ最近やたらと海外の方々から届いているんです。昔と比べるとちょっとずつ反応が増えて、濃くなったし良い流れがきている感じがすごくします。今の時代は正直、YouTubeで全部見られるので、無料のプレミア公開も間違ってはいないと思う。まず海外向けにちゃんと字幕など付けていただいて、内容をしっかり見てもらいたいです。

 ただお国柄や背景が全然違うから海外で何が刺さるか分からないんですよね。戦隊は「パワーレンジャー※」で成功しているけど、比べると海外での仮面ライダーはそれほど……。でもパワーレンジャーがあれだけ伸びるんだったら仮面ライダーも壁を突破して、そのうち「マーベルヒーローズvs仮面ライダー」が実現してもおかしくないじゃないですか。

※パワーレンジャー …… スーパー戦隊をベースにした米国内で放送されるシリーズ。変身後の戦闘シーンなど以外を現地で制作して放送するやり方で、1993年から30年続く長寿シリーズに

―― めちゃくちゃ見てみたいです。

北条 アメリカンヒーローとジャパニーズヒーローの対決。そんなお祭り映画があってもいい。アイアンマンがはやるんだったら、仮面ライダーがはやってもいいだろうと思っちゃうんですけど。ねぇ?

 生誕50周年の仮面ライダー展や、藤岡弘、さんのインタビューを見た上で、これから先仮面ライダーがなくなることはないと思いました。もしかしたら「BLACK RX」の後(「クウガ」放送開始までの10年4カ月)みたいに数年空くことはあるかもしれないですけど、完全になくなることは絶対ないはず。

●“元仮面ライダー”の誇り 「がっかりさせないような生き方をしなきゃ」

―― OBとして、海外ヒットの他に仮面ライダーシリーズや後輩へ望むことはありますか?

北条 後輩ライダーたちには数字とか何も気にせず、のびのびやってほしいです。たぶん彼らも数字について聞かされていると思うので。でも今の時代はTikTokとかSNSで彼ら自身の魅力を拡散できるコンテンツがすごく多い。本人たちも愛されやすくなっている環境はすごくいいと思います。僕たち平成1期の世代は初めて対面してやっと「そういう感じの人だったんですね」と分かる時代でした。

―― 天野さんが顕著ですね。X(Twitter)のアカウントを開設されたことで、今になって違う面がどんどん発信されています。

北条 そう、「天野さんってこんなド天然お花畑なのか」って顔を合わせてようやく分かる時代だったのが、ここ最近は公式が本人たちの素顔を発信してくれています(笑)。

 「ギーツ」の(主演)カンキチ(簡秀吉)くんがめちゃめちゃ好きなんです。撮影が始まった時期に1回お会いしてるんですけど天然というか面白い子で、1年通してその面白さと愛嬌(あいきょう)をしっかりSNSでも振りまいてくれた。役とのギャップもあってカンキチファンがすごく増えて、そういう面では今の時代が本当にうらやましいです。

 反対に、変な意見が飛んできたとしても、気にせず自分たちの思ったようにどんどんやってくれればいい。特撮ってすごく特殊な現場で、番組が終わっても5年、10年、20年たとうが、絶対ずっと言われ続けます。僕自身こうも何年たっても言われるものだとは思っていませんでした。

―― それは今日、ぜひお聞きしたかったところです。仮面ライダー俳優の肩書は一生もので、プレッシャーもあればいい働きもあると想像しますが、ご自身はどう捉えてらっしゃるんですか? 睦月は闇落ちも経験する難しいキャラでした。

北条 睦月の役ですら「すごく好きだった」「レンゲルめっちゃ好きです」と言ってくださる方々がたくさんいらっしゃいます。リアルタイムで見ていた世代が大人になって、いまだに「僕にとってはレンゲルが一番のヒーローです」と言ってくださる人たちを、仮面ライダーというか特撮に携わった自分としては裏切れないという思いがあります。

 もし何かやらかしてしまえば絶対「元仮面ライダー俳優が」と見だしにつけられてしまうものです。仮面ライダーのイメージを傷つけてしまうし、ファンにも申し訳ない。清廉な生き方を、なんて言えないですけど、ずっと憧れてもらえる存在でい続けたい。がっかりさせないような生き方をしなきゃとずっと心の中にあるし、肝に銘じています。何年たとうが「ヒーローでいたい」という気持ちをくれるので、本当にものすごい力を持つ作品です。

 OBにも「ずっと元仮面ライダーは嫌だ、要はそれを越すような役や芝居ができていないんじゃないか」と嫌がる人はいます。でも僕は構いません。そもそも仮面ライダーになれる人が世界にどれだけいるのか。ほんの数%です。だから誇りを持って「元仮面ライダーです」と言いたい。払拭(ふっしょく)するような別作品が出てこなかったら、それだけ偉大な作品だったって考え方にシフトした方がいいと思う。それだけ重いんですよ。仮面ライダーって作品は。1回やっただけで誰かの記憶にずっと残り続けるんです。

 これから育っていく後輩たちには、「ずっと仮面ライダーって言われるけど、何がいけない?」と伝えたい。堂々と「仮面ライダーです」とずっと大切にしてほしい。そこは熱弁しておきます!

●特撮俳優にセカンドキャリアを、レンゲルには強化フォームを 北条隆博の夢

―― 北条さんにとっての仮面ライダーとは?

北条 悪いことはダメと教えてもらえる教育番組。内容が濃いから正直子どもたちにどこまで伝わっているのか分からないですけど、ただ「悪いことしてるな」とは伝わるはず。悪いことをするとどうなるか。正義は絶対悪に勝つ。昭和から平成の初期はだいぶ難しい描き方をしてはいましたけど。

―― 平成ライダーはストーリー構築の複雑さをよく指摘されてきましたね。「555」の草加雅人に代表されるような、簡単に正義のヒーローとはカテゴライズできないキャラも誕生し「剣」にもその要素はありました。

北条 そうですね。草加にも草加の正義があり、確かにすごく難しいニュアンスではあるんですけど、大人になると人にはいろんな正義があると分かる。選ばれる正義とは何か。それが平成ライダー1期の見どころだと思います。

 昭和のライダーは分かりやすかった。悪いやつは「許さん!」で、バーン。子どもながらに、「やっぱり悪いことをしたら倒されてしまうんだ」「弱いものいじめはダメなんだ」とすごく勉強になった。怖いやつがいっぱいいますからね。

―― 敵にも印象深いキャラが多いですよね。

北条 そうそう。何だかんだでみんなかっこいい! シンプルにかっこいいから憧れて、そうになりたい、なるためにはどうしたらいいか子どもながらに考えるし希望が持てるじゃないですか。

 僕にとっての仮面ライダーといえば、「仮面ライダーBLACK RX」。倉田てつをさんではなくて、ずっと(主人公の)南光太郎なんです。僕に初めて会う人もだいたい同じで「睦月だ!」と役名で呼ばれます。「申し訳ないけどお名前は?」で全然構いません。だって僕も倉田さんに会ったら「光太郎だ!」となるから。それがヒーローだと思う。だから役名で呼ばれても邪険にするんじゃなくて、「睦月だと分かってくれたんだね、ありがとう」と言いたい。その気持ちが分かるので。

―― 今度は現実を頑張っている大人へのメッセージをお伺いしたいです。一度芸能界を引退されてそこから転機を経験されている立場として、同じように別のフィールドへ踏み出そうという方へ、伝えたいことはありますか?

北条 僕自身、引退に迷いはなかったんです。10年やったし自分のやってみたいことをやろうっていうのがきっかけで「いったん辞めます」と。飲食をやりたくて、そのためにはお金を減らすわけにもいかないし、20代で事務所を辞めてからは取りあえずアルバイト生活をしていました。いろいろやってみて、そもそも名古屋に戻ったら「東京ばっかりイベントやりやがって西の方に来ないじゃん」とイベント運営について考え始めました。

―― そこに今へつながる原点があった?

北条 飲食業をやるにしても、ステージを作ってプレミアナイトみたいに特撮俳優さんを呼べたら、ちょっとは盛り上がるんじゃないかなってところからスタートしました。

 気持ち悪いくらいピタッとはまる運命のタイミングがくると思う。今の仕事先も本当にたまたま、そろそろ動こうと思ったタイミングで話をした相手が「たまたま北条くんが話したようなスペースを今作っている」と誘ってくれました。運には確かに恵まれているのかな。見に行ったら自分が考えたまんまの場所があり、すぐ就職しました。カフェとイベントの両立ができるか分からないし、取りあえずやってみて決めますと。

―― 思い切りはいい方ですか?

北条 たぶん。でもむちゃくちゃ考えます。むちゃくちゃ考えて、ずっと考えていてもしょうがないって途中で開き直るタイプ。アントニオ猪木さんの名言と一緒で「やる前から負けることを考えるやついるかよ」。アクションを起こさない限りは何も変わらないじゃないですか。だったら動いてから悩もうと考えを変えました。何か不具合が起きるかもしれないけど、動いてみないことには何が問題か分からない。本当にやりたいことなのか、やりたくないことなのか。絶対みんな迷うと思いますが、それは興味があるから。なら行ってみてから迷って決めた方がいい。

 バイト時代でもありました。「向いてないからもう辞めます」って。ただ迷惑が掛かるのでちゃんと筋は通す。一度採用された手前、辞めづらいかもしれないですけど、仕事なんて自分の好きなことを楽しいなと思えるのが一番じゃないですか。やってみて違ったらまた別の仕事を探すなり何なりを繰り返してもいいと思う。自分のいいところを生かせる場所が見つかるまで何回もトライですね。

―― 本当にご自分がおっしゃった通りのやり方ですね。今のお店の話ですとか、大阪でもっとイベントができるようになりたいとか、ライダーの海外進出みたいな話をされていましたけど、将来的にどうなりたい・どんな自分でありたいみたいな夢を持ってますか?

北条 将来的にはどうなんだろう。出る側になっているのか、バックヤードで回す人間になっているのか、はたまた両立しているのか。まだ分からないですけど、両立できるのがベストです。

 ただ役者はその場にずっとい続けることで保たれるわけで、しばらくブランクがあると鮮度が落ちるので久々にお芝居してへこむかもしれないです。やってみなきゃまだ分からない。20周年をきっかけに復帰させていただけるのであれば、まだ自分はやれるのか見てみたい。

 最終的には、特撮の俳優さんたちを巻き込んだエンターテインメントをやっていきたいです。特撮俳優のセカンドキャリアとなる場所を何か作れたらいいな。事務所なのか、それともイベントを打ち出せる場所なのか。

―― セカンドキャリアの話が今出ましたが、特撮でブレイクしたあとには伸び悩む俳優さんは多い印象です。

北条 本当にそのパターンの人が多くて、なかなか見なくなっちゃう方もいます。大手の事務所はチャンスも多いけど、無所属や中堅クラスの事務所でくすぶっている方々の手助けがしたい。またお芝居に出てもらったり、総合エンタメのイベント企画を立てたりができるような……会社という形になるんですかね。受け皿というか、自前で企画から公演打ち出しまで全部できれば強いでしょう?

 特撮俳優さんを集めて、ウルトラ、戦隊、ライダーの俳優が入り乱れる夢のような舞台をいつか作りたい。ヒーローものではなく普通の舞台なんですけど、ファンから見たら仮面ライダーの人だ! 戦隊の人だ! ウルトラマンの人だ! とグッとくるじゃないですか。何かそこに一筋の光が見えている、今そんな感じなんです。

―― 最後に、北条さんにとって「仮面ライダー剣」とはいったい何でしょうか?

北条 何ですかね、自分の基礎を全て作ってくれた現場。ブレイドがなかったら今の自分は絶対いない。こういう考え方をしてもいなかったし、出会えなかった方もいたはず。体の水分と一緒で、なくてはダメだし、大半がそれで満たされてる。なんかきれいな言葉で納めたいな(笑)。

―― これまでの経験があって、今の北条さんが演じる睦月はどうなってるんだろうとすごく楽しみになります。睦月はいったい何してるんでしょうね?

北条 今の橘さんって、BOARD(※ブレイドに登場する組織。人類基盤史研究所の略称)の所長を引き継いで研究しているから、昔みたいにブイブイやれなくなっているでしょ。僕としては、その位置に睦月がいてほしい。一緒に研究していてほしいんだよなぁ。結局、チソ(※オンドゥル語で基礎の意味)訓練をずっと続けているパートナー同士でいてほしいな。

―― 今でも師弟関係が続いていると? 劇中から4年後が舞台の劇場版で就活して、10年後を描くドラマCDでは会社員にはなっていましたが。

北条 あんな経験して普通の会社員にはなれないですよ。劇場版でも普通の会社員じゃなくてスマートブレイン社※に入ろうとしてる設定だったし。泉くんとかが面接官でいらっしゃったんですけど。

※スマートブレイン …… 「仮面ライダー555」に登場する企業。その実、上層部はほとんどオルフェノクでこっそりオルフェノクの支援もしているいわば悪の組織

 睦月は普通の会社員に憧れて普通になろうとしてるけど、僕に言わせれば無理! だったら橘さんにそのまま拾われて一緒に研究してる方がまだいいんじゃないって。橘さん「アウトサイダーズ」※ではあんな豪華な服着てるんだから、今は給料も支払われているんじゃないかな(笑)。

※「仮面ライダーアウトサイダーズ」 …… 東映特撮ファンクラブ(TTFC)で配信中。複数のシリーズからキャラが出演するスピンオフ作品で、「剣」からは橘朔也/仮面ライダーギャレンが登場

―― 本編のBOARDは1話でいきなり壊滅していましたからね。衝撃でした。

北条 剣崎さんも「途中で給料も払われなくなった」ってアパート追い出されていましたね。「アウトサイダーズ」ではめちゃめちゃきれいになったから、たぶん進化しているはずです。

―― 「アウトサイダーズ」といえば、4話でギャレンのキングフォーム登場が発表されたばかり。このときレンゲルがSNSでトレンド入りしていましたが、ご存じでしたか?

北条 そうなんですか? 「あと残すはレンゲルだけか」みたいなやつでしょ。そろそろ僕もしびれを切らしてきましたよ。強化フォームがあってもいいんじゃないのかなぁ、このままだと本当に1人だけない状態なので。今の仮面ライダーってほぼ出てきた人たちみんな変身するじゃないですか。「ギーツ」に関してはナーゴのお父さんまで変身するのでびっくりしました。今の時代にもしレンゲルを出すのであれば、強化フォームは必須でしょ!?

―― きっと来ると信じつつ、20周年楽しみにしています。

北条 頑張ります! (最新作の)「ガッチャード」もカードがモチーフだから、ガッチャードとガッチャンコしたいですね。

●Cafe 2nd STAGE カフェセカンドステージ

〒556-0005 大阪府大阪市浪速区日本橋4丁目9-5 インディペンデントシアター2nd 1F

Cafe 12:00~17:00 / Bar 18:00~22:00 定休日 水曜・火曜

公式X(Twitter) https://twitter.com/Cafe2ndSTAGE

公式Instagram https://www.instagram.com/cafe2ndstage/

北条隆博さん
(出典 news.nicovideo.jp)

仮面ライダーシリーズ > 仮面ライダー剣 この項目には、JIS X 0213:2004 で規定されている文字(ハートマーク)が含まれています(詳細)。 『仮面ライダー剣』(かめんライダーブレイド、欧文表記:MASKED RIDER BLADE)は、2004年1月25日から2005年1月23日までテ…
125キロバイト (14,642 語) - 2023年9月2日 (土) 13:34


(出典 www.kamen-rider-official.com)


北条隆博さんのインタビューコメントからは仮面ライダー剣がファンにとって特別な作品であることが伝わってきます。20周年目前にこれらの思い出や意気込みを振り返ることができるのはとても素晴らしいことですね。


<このニュースへのネットの反応>

本人もオンドゥル語の件思いっきり認知してたのかよw まぁさすがにそりゃそうかw




剣の前半はネタ要素だらけだが、後半から終盤にかけて面白くなるんだよなぁ。今、つべの方で配信してるので(次に配信されるのは『もずく風呂』のあたりか)、未視聴の方や興味のある方は是非どうぞ(ダイマ)


剣をネタでしか知らない人は是非最後まで観て欲しい、あの最終回は長いライダーシリーズの中でも屈指の最終だと思う


今となってはすごく愛されてる作品になった。あと全部乗せ最強フォームが普通にかっこいい希少なライダー。


今でもメイン俳優4人の仲がいいのは作品が好きだからすごい嬉しい。


ネタ要素も強いけれど、それゆえにちょこちょこと客演等含めて存在感も強く感じる作品。 (0M0|壁


睦月の回(おおよそ本編の半分以上)がだいぶぐだっただけで終盤めちゃくちゃおもろいしな


素敵な記事やないか…


アンデッド2人の力を借りて、スパイダーの呪縛を乗り越えるくだりは今も好きです。